「橋の上のバトル」と私は勝手に呼んでいます。
朝の通勤時間帯、橋の上の車は大渋滞です。
私の住んでいる家から店に行くのには、丹波島橋という大きな橋を越えなければなりません。
朝の時間はバスレーンで車線が規制されるため、この橋に流れていく道は、どこも長い車の列が出来ています。少しでも早く行こうと、それぞれの交差点や信号で、列に割り込もうとする車の、鋭い駆け引きが、毎朝繰り返されています。
でも、私の言う「橋の上のバトル」は、実は車道ではなく、その横の歩道の方で繰り広げられます。家から店までの約六キロの道を、私は自転車で通っています。スムーズに行けば三十分もかかりません。
ところが、家を出てからすぐにさしかかる、この丹波島橋。これが、自転車で渡るには、一つの難所なのです。
ご存知のとおり、橋というのは、端が低くて真ん中が高い構造になっています。橋にもよりますが、少なくとも、丹波島橋はそういう造りになっているのです。おまけに、橋のたもとに辿り着くまでに、土手の高さだけ、登らなければならないのです。
車で通り過ぎる人には、おそらく気にならない勾配でしょう。ギアを切り替えることもなく、アクセルペダルを踏み込むこともなく、トップスピードで渡って行かれることと思います。ところが、自分の足で越えて行く自転車は、そうはいきません。橋を越えるための、長く続く上り勾配は、意外なほど体力を、特にモモの力を使うのです。
一昨年のガソリン価格高騰のおりには、この橋を自転車で越える人たちが、ぐっと増えました。さすがに、今は、その時ほどではありませんが自転車で通勤、通学をする人はけっこうたくさんいらっしゃいます。
皆さん、この橋を渡るのには、さすがに苦労されているみたいで、途中から歩く方もいるくらいです。にもかかわらず、軽快に、たいしてスピードを落とさずに、すいすいと渡って行かれる方もいるのです。
私は、若い時から、自転車には乗り馴れていました。以前は、ロードタイプと言う、フレームの大きなタイヤの細い自転車に乗っていました。でも街中を走るには不向きなので、今はクロスバイクと呼ばれるものに乗っています。タイヤの太い、街乗り用の自転車です。
おかげで、地面のでこぼこを、あまり気にせずに乗ることが出来ます。
そんなことで、少しは自転車に乗る体力に自信があったのです。
ところが、通勤通学の人たちに交じってこの橋をハアハアいいながら渡ってみると、、、、けっこう追い抜かれます。
見るからに高級そうな車体に、いかにも自転車をやっています、という服装の人に追い抜かれるのなら納得できます。でも、片手をポケットに突っ込んだままの高校生や、普通のママチャリに乗った、後ろ姿のはげ上がっているおじさん(失礼)にまで追い抜かれると、なにか口惜しいのです。つい必死になって、冬でも汗をかいたりします。
丹波島橋は、松本や北アルプス方面から流れてくる犀(さい)川と、戸隠鬼無里(きなさ)方面からくる裾花(すそばな)川が合流するところにかかっています。
晴れた日には、犀川の向こうに北アルプスが見えます。今の季節だと、雪をいただいた鹿島槍ヶ岳が、鋭く青い空に突き刺さっています。
正面には、長野市の最高地点である飯縄山がそびえています。冬の日の出の遅い頃には、ちょうど、山頂から、徐々に朝日があたって行く様子が見られたりします。
この頃は、エコという言葉がはやっていますが、私の扱っている「そば」は環境への負担の少ない作物。
地球のためにも、もっと「そば」を皆さんに食べていただきたいなあと思っています。そして、私も、自転車をこぎながら、地球にやさしい生き方を心がけたいものです。
かんだた店主 中村和三