2017年06月

地道な努力に支えられてきた、常陸秋そば。

そば粉屋さんから、
常陸秋そばのいいのが入ったからと、
挽きたてのサンプルの粉をいただいた。

打ってみると、
これがねえ、なかなかいいんだよね。

食感は、ややもちっとした感じであるが、
口に入れたあとに、少し遅れて、独特の香りが広がる。
甘さはそれほど強くはないが、なんというか、
品のある味わいだ。

なるほど、東京あたりのそば屋さんで、
このそば粉が人気なのが、わかる気がする。
先日、東京に行った時に訪ねた一軒でも、
このそばを使っていた。

長野の信濃一号や、
北海道のキタワセなどとは、
まったく違う風味なのだ。
特に、口の中に強く残る香りは、
好き嫌いはあるかもしれないが、
じつに特徴的だ。

この常陸秋そばは、
名前からも分かるように、
茨城県の北部で作られている。
在来種から選別して、
粒ぞろいのいい品種を作り上げたのだね。

しかし、良い品種を作ったからといって、
それは広まらない。
交雑しやすいそばは、
栽培の品種を保つのが難しいのだね。
そこを県をあげて、
地道に、ブランドづくりに励んできたそうだ。
30年以上もね。

種子の更新、栽培方法の統一など、
様々な努力を重ねて、
常陸秋そばという、
ブランドを作り上げてきたのだ。

私は、だいぶ前にこのそばを食べたときには、
風味は強いが、味のないそばという印象があった。
それが、今では、しっかりとしたそばになっている。

この独特の風味を活かすには、
私の 絡むタイプのそば汁には、合わないかもしれない。
もっと、サラッとした、
塩味の濃い汁がいいのかもしれないね。

そうして、この地元長野でも、
こういうそばのブランドを育てる努力をしていただきたいなあ。
と、切に思うのだが。

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久しぶりの東京のそば屋食べ歩き

先日、久しぶりに日帰りで東京へ出て、
そば屋巡りをしてきた。
う〜ん、東京は、色々な店があって、
楽しいね。
と言っても、若い頃と違って、
せいぜい三軒を回るのが精一杯。
一軒一軒、じっくりと楽しみたいからね。

今回は、上野に用事があったので、
その周辺の店となる。

まず、最初が上野駅前の「翁庵(おきなあん)」。
ここは、古くから、地元の方々に支えられている、
伝統的なそば屋。
ネギせいろというのが、一番人気だと、
最初に食券を買う時に、
おばちゃんが教えてくれる。
その食券は、ボールペンで走り書き。
これなんて書いてあるのかな、、、
という字だが、花番のお姉さんには、
分かるらしく、間違いなく運ばれてくる。

時代を感じさせる店内。
落語家の色紙なんぞも飾ってあって、
見て飽きない。
この店独自のメニューがあって、
お客さんを楽しませる工夫をしているのだね。
歴史のある店は、
たいてい高級路線に走ってしまうものだけれど、
こういう大衆的なそば屋が残っているのが、
なんともうれしい。

二軒目は、動物園の横を下って、
根津にある「蕎心(そばこころ)」。
ここ古い2階建ての家を、
そのまま改装して店に作っている。
入ってみると、十席あまりの一階はうまっていて、
狭い階段を登って二階の座敷へ。
八畳二間ぐらいの広さの、
普通の家の部屋という感じだが、
照明とか、テーブルなんぞに、
ちょっとした、店らしい工夫がなされている。

ここは開店して二年なのだそうだが、
こういう造りの店にした、店主の姿勢が感じられるね。

そして、ここには、
「巣ごもりそば」がある。
これは、揚げそばのあんかけのこと。
かんだたの「油地獄」とは、
また違った味わいがあっていいなぁ。

そばも、じつに、丁寧に打たれていて、
う〜ん、見習わなくては、、、、。
店主もスタッフも若く、
小さいけれど、じつに、活気を感じさせる店だった。

そして、最後は、
老舗といえる「上野藪(やぶ)そば」へ。
ここには、若い頃何回か入ったことがある。
あまり記憶が無いのだけれど、
「お酒は◯本まで」などという張り紙があったような、、、。
今は建て替えられて、
モダンな造りとなっている。

この店に行くために通ったアメ横の雑踏のスゴイこと。
やたらと外国語が飛び交い、
安さを競う立ち飲み屋に人が溢れている。
その猥雑な喧騒の中で、
扉を開ければ、なにやら、
張りつめたものを感じさせるのは、さすがだなあ。

メニューに「焼き海苔」なんぞがあるので、
ついつい頼んでしまった。
下に炭の入った箱で出て来るのは、
昔のまま。
ついでに、酒の銘柄も、昔と変わらず。

これだけの店なのに、
そばを手打ちしているのは大したものだ。
特に、つゆの味は、そばとの相性がいい。
東京のそば汁は辛いというけれど、
ここは、それほどでもない気がする。

ということで、楽しませていただいたそば屋巡り。
そば屋というと、蕎麦の味だけ見て、
自分の好みに照らして、
うまいとか不味いとか言う人もいるけれど、
そば屋の世界はもっと奥が深い。
そんな単純な言葉では、そばは語れないだろう。

私たちは、どうしても、
そばを食べると、廚房の仕事が見えてしまう。
だから、きちんと、頑張っているそば屋さんが好きだ。
雑誌取り上げられたり、
ネットで評価の高い店などにいっても、
そば屋の仕事として考えると、
意外と、がっかりしてしまうことも多い。
ただ、シチュエーションや内装が良かったり、
奇をてらった盛り付けで、
内容の伴わない店もある。

たとえ評判にならなくても、
地元の人達に愛され、
長く続けていけるようなそば屋を
こうして訪ねてみたいものだ。

で、今回の本当の目的は、
この展覧会。
奇妙な怪物の絵をかいた、
ボスとプリューゲルの作品を見るため。
あれ、絵の中の怪物が、
一匹抜け出している、、、、、、のかな。

 

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