この頃、どうも肩の辺が重くなって、
首を回すと、コキコキと音がする。
何やら、膝も曲げづらくなって、
時々、コキっと音がする。
そうか、
だから70歳のことを、
「コキ」と呼ぶのだねぇ。んっ。
ああ、そんな年になってしまった。
私の周りの同年輩の人たちにも、
元気なジジババが多い。
でもねえ、色々と、
健康上の悩みに突き当たっている人もいる。
中には、片道切符を持って、
どこかへ行ってしまった人もいる。
コロナ禍で苦しんだ私は、
まだまだ店を続けるべく、
日々、働き続けなければならない。
でもちょっと待てよ。
元気なうちに、やっておくべきことが、
残り少なくなった人生に、
あるのではないか。
店の仕事はもちろん 大切だが、
それ以上に、
今、やっておかなければ後悔することが、
山ほどあるのではないか。
その、うず高く積み上がった山の中から、
ほんの小さな塊をつまみ上げてみる。
そう、これならできそうだ。
何年も前から、いつかは、
と、密かに温めていたものだ。
これをやるのは、
今しかない。
店のお客様には迷惑をかけるかもしれないが、
思い切って、
「Enter」のボタンを押してみよう。
それが、
スペインのキリスト教の聖地、
サンティアゴ・デ・コンポステラを目指す、
巡礼の旅だった。
私はキリスト教徒ではないけれど、
異国の荒野を歩く、祈りの旅に心が惹かれる。
幸いなことに、スペイン語ならば、
少しは心得があるからね。
ということで、
いくつかあるこの巡礼路の中で、
フランス人の道の
最後の260キロを歩いてきた。
歩いたのは18日間、
前後を入れると25日という長い旅となった。
頼る人もなく、
女将と二人だけで、
言葉も習慣も違う国を、
自分で背負えるだけの荷物で、
毎日毎日歩くのは、
思ったより、大変なことだった。
なにしろ、道は平らではない。
至る所に登りもあるし下りもある。
1日に、700メートル以上の標高差があることもある。
それに、前半の二つの峠を越えた時には、
大雪に恵まれてしまった。
よっぽど普段の行いが、、、
いや、良かったので、あの程度で済んだのだろう。
3月はまだ、巡礼の季節ではなく、
開いている宿も、レストランも少なかった。
目的地に着いても、宿が見つからなかったり、
朝から、夕方まで、食べるところが無かったことも。
1日平均15キロも歩けばいいと思っていたが、
宿のある街は、そう都合よく、散らばっていない。
時に、長い距離を歩かなければ。
なんで、こんなことをやっているのだと、
思ったことしばしば。
そんな苦労もあったけれど、
今思えば、とても、贅沢な時間を過ごせたのだと思う。
日々の暮らしから抜け出し、
全く違う景色、人、食べ物、
世界を体験できたのだから。
ということで、しばらく、
スペインのネタが続くかな。