さて、店で使うそば粉というのは、
まさに、店の命というべきもので、
このそば粉の選び方一つで、
店の印象は大きく変わってしまうこともある。
なんていうと、
また、おおげさな〜〜、
などと言われるかもしれないが、
とても、とても、
簡単に言い表せられるものでもない。
う〜ん、
まあ、大風呂敷に包まれた気分でお読みください。
もちろん、そば屋をやっているので、
色々なところから、
そば粉のサンプルをいただくし、
また、あえて、手に入れることもある。
それぞれに、微妙な違いがあって、
面白いのだよね。
製粉屋さんによって、
それぞれ印象の違うソバが出来上がるし、
味はともかく、とにかく、
食感の違いは著しい。
同じ玄そばから作られたそば粉でも、
そばに打ってみると、
ずいぶんと変わりがある。
だから、自分の店にあったそば粉を、
選び続けることは、
そば屋にとって、とても大切なことだ。
そばを粉にするだけなら、
簡単なことと思われていたりするが、
このやり方で、差が出るのだね。
製粉屋さんも、
いろいろと工夫をして、
そば粉を作っている。
だけど、その会社によって、
作り方に、わずかながら、
違いがあるのだよね。
そんな特徴が出る。
だから、
地元のそば屋さんに入ったりすると、
すぐに、あそこの製粉屋さんの粉を使っているなあ、
と、勘ぐったりしてしまうのが、
我ながら、面白くなかったりする。
それに引き換え、
自家製粉なら、
つまり、自分で石臼を用意してそばを挽けば、
思う通りの粉が出来上がるのではないかと、
考えていた時期もあった。
幸いに、
全国の製粉屋さんの機械を作る会社が、
長野にあるので、
事情を話して、試しに、
石臼を使って、そば粉を挽かせていただいた。
製粉屋さんから、
丸抜きといわれる、
皮を剥いたそばの実を持ってきて、
一尺一寸(約33センチ)の小さな石臼で、
グリグリと挽いてみた。
もっとも、電動だから、私は見ているだけ。
なるほど、
石臼の間から、
粉になったそばが挽きだされ、
下のフルイに落ちていく。
それを、私は見ているだけ。
で、引き終わった粉を、
店に帰ってそばに打ってみた。
わあい、挽きたてのそば粉だぞう。
ところがねえ。
ところがねえ。
ところが、、、、、。
挽きたてのそばの香りはするのだが、
なんとも食感が悪いのだ。
茹でても、ふわっと膨らまない。
甘みがいまいち。
なにやら、ねばりっこいような、
舌に残るような風味がある。
なぜだろう。
その後で、
その機械会社の人に正直に話したら、
その技師さんも正直に言う。
「そうでしょうねえ。」
その技師さんの言うことには、
まず、次の3つのポイントがあるという。
まず、そばの実は、
皮を剥いた途端に劣化するのだそうだ。
だから、製粉会社では、
皮を剥いたらすぐに粉にしている。
次に、
どんなにいい石臼でも、
癖があり、
その癖を治すには時間が掛かるとのこと。
いい粉を挽くには、
最低でも三個の石臼を使うことによって、
その癖の影響を取り除く事ができるという。
思わず、石臼が何十台も並んでいる、
製粉屋さんの光景を思い出してしまった。
そして、
石臼が小さすぎるとのこと。
つまり、
一尺一寸の石臼では、
挽いたときのムラが大きいと言うのだ。
この技師さん、
実際は石臼を売っていながら、
まったく商売っ気がないんだね。
その後も、シフターの大切さや、
分子間引力などの話も伺い、
とても参考になったというか、
私たちの想像とは違う次元で、
製粉の機械が作られていることを実感したのだ。
いいそば粉を作ること、
世の中には、それを考えながら、
努力している人達もいるのだ。
思い込みだけで、入れる世界ではない。
で、いいそば粉って、、、、
なんなの。
そんな話は、
またいつか。
いるになるやら、、、、。