●小野小町は平安時代に生きた女性。
絶世の美女として、
千年以上経った今も、その名が伝えられている。
よく、美人がいると、
○○小町などと、はやし立てられたという話も、
最近まであったこと。
よっぽどの美人だったのだろう。
さて、その小野小町は、
秋田県の出身だそうだ。
秋田と言えば「秋田美人」。
色の白い人が多いそうだ。
ご丁寧に、
この肌の白さを測定したお医者さんがいたそうで。
それによると、秋田県の女性の肌は、
全国平均に比べ、かなり、白いことが判明したそうだ。
これは、秋田県の年間の日照時間が、
常に最下位にあることと、
関係があるのだか、、
ないのだか。
昔から言われている言葉。
「色の白いは七難隠す」。
つまり、色が白いと、
少しぐらいの欠点が隠れて、
女性が美しく見える、、、とか。
小野小町も、
きっと、色白の美人であったことだろう。
●さて、長野の人が、
東京へ行ってそばを食べてきた。
そうして、こんなことを言う。
「いやあ、東京のそばは、
白くて、うどんみたいだったよ。」
多分「更級」を召し上がったんだと思ったら、
普通のそばだという。
ははあ、東京のそばは、確かに、
ここ長野で食べられているそばに比べると、
色が白いかもしれない。
ひと昔前には、そばは、色の濃い方が、
そば粉がたくさん使われている、
と思っている人が多かったそうだ。
つまり、色の白いそばは、
小麦粉が、たっぷりと使われているからだと。
実は、そばの色は、
小麦粉の量とは関係がない。
そばの実の内側の部分を使えば白くなるし、
そばの実の外側の部分を使えば濃い色になる。
さらに、殻まで挽き込めば、黒いそばになる。
つまり、そばの色は、
そばの実の、どの部分を使うかによって、
変わって来るのだ。
●その昔、秋田に行った時、
一緒に行った友人が、
駅前の観光案内所で尋ねた。
「あの、どこへ行けば秋田美人に会えますか。」
ひとしきり、大声をあげて笑っていた、
窓口のおばさん。
それでも、道路の向こうを指差して、
「ほら、あそこのデパートに行けば、
たくさん秋田美人がおりますよ。」。
ということで、
デパートで美人鑑賞会。
美人がいたかどうかは、
ちょっと、記憶が曖昧なのだけれど、、、
でも、色白の人の多いことは確か。
さて、秋田は日照時間が少ないから、
色白の人が多いとか。
そばも、光のあたる外側ほど色が濃く、
光の届かない内側は、白っぽい。
その白っぽいところだけを食べたいという、
そう思った人もいるんだね。
そばの実を臼で挽くと、
柔らかい内側の部分から粉になって出てくる。
それが一番粉で、白い色をしている。
それから、やや色付いた二番粉、
そして、さらに色の濃い三番粉が出てくる。
それじゃあ、一番粉だけでそばを作れば、
真っ白なそばが出来るはず。
ところが、ところが、そうもいかない。
この粉は、確かに色は白いが、
そばかすだらけなのだ。
つまり、ホシと呼ばれる黒い点が混ざってしまうのだ。
●もっと、色白の、美人のそばに出会いたい。
秋田に一緒に行った友人みたいな、
そんな思いの人たちが、
工夫をしてみたんだ。
そうして、そば粒を粗く割ってから、
そばの芽の部分や不純物を取り除き、
臼を浮かせるようにして挽いて、
そばかすのない、真っ白な粉を作り出したんだね。
これが「更級(さらしな)」。
江戸時代から作られていたが、
技術が確定したのは、明治になってからだそうだ。
美人が扱いにくいように、(よく知りませんが)
この粉も、そばに打つのがちょっと難しい。
だから、湯ごねという方法で、
そばを打つのだ。
さらに、薄く延ばす難しさがあって、
職人の腕の見せ所とばかり、
細打ちにしたりする。
私も「更級」を作るけれど、美人を前にして、
ちょっと、包丁が乱れ気味。
でも、ほら、
色が白いは、、、
ええ、私のは七難じゃなくて、
百難だから、隠しきれないって?
●色白の美人には、化粧も引き立つ。
だから、この更級にも、
化粧、、、いや、
さまざまな変わりそばが似合うのだね。
お茶の緑、エビの赤、タマゴの黄色、
ごまの黒等と、鮮やかな色を楽しむそばもある。
柚子切り、桜切りなどの、香りを楽しむそばもある。
近頃、こういう変わりそばを用意しているそば屋が、
けっこう増えてきているようだ。
そんな、遊び心に付き合うのも楽しい。
「手打ちそば屋 かんだた」でも、
ちょっと、今までとはちがう、
そばの味のしっかりとする「更級」をお出ししている。
色も真っ白ではなく、
ちょっと、黄色がかった、落ち着いた感じ。
甘味の乗った、美人のそばだ。
だったら、
「小町そば」という名前に変えようか、
今考えているところ。
んっ、「小町」が泣くって。
そばコラム